「淵から」

したり顔 
淀んだまなざしに居座った 
落人のなぐさめあい。

求めることさえ許されず 
しわがれつくされ 
すり減らされ 
荼毘に消えていった人たちの嗚咽を
腹いっぱいに蓄えて
自沈していく負け組み確定者のうちで
祈りは発動する。

えもいわれぬ速さで 
えもいわれぬ強さで
爆心地めがけてまっしぐらに
口裂け女になり
砂かけばばあになり飛んでゆく

途端に予約は発火する。
世界中の予約席は
口裂け女となった祈りによって
イチジクの葉とともに燃されてゆく。

あした天気になあれ」とわめく子供の声ほど
あの方を悲しませるものはない。

今日
淵に立って思ったこと。