2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

掌編_大晦日

大晦日だというのに、今日も僕はすることがない。だからここにずっと座っている。のどが渇くので、いつでも入れたてのジャスミン茶が飲めるよう、ポットにサーブしてテーブルの上に置いてある。オーディオでかけているのは大好きなフィリップ・グラス。いつ…

掌編_採掘

内面を深く深く掘り下げていくことが、ものを書くことの面白みであると考える僕は、一人部屋に閉じ篭り文章を書く。もう一人の僕が出てきて、心の中をずんずんと掘り進んでいく。掘り進む途中、居眠りをしたり、髭をそったりして道草することも往々にしてあ…

掌編_妻

何はともあれ今僕はここに居る。そして、妻は昨日まで確かにそこに居た。なぜとかどうしてというのはどうでもいい。とにかく今僕はここに居て、彼女は確かに昨日までそこに居た。 ことが起こったのは昨日の夕飯時、妻のために夕飯を作り一緒に食べた。ガーリ…

掌編_達磨

なにもすることがないというのは、人生における至福のひとつであると僕は思う。僕の場合、それが毎日のように続くのだから、ある意味幸せなのかもしれない。今日も僕はいつものように目を覚ますと、そのままぼーっとして窓のほうをみる。たいそう天気がいい…

掌編_事実と僕

新聞のスクラップを彩ることに、何の興味も沸かないし、ましてやそれを自分がやることになるとは、未だに信じられないが、実際は、こうやって新聞のスクラップを装飾する始末だ。僕の中でそれがいつから始まったのか思いだせないし、いつそれが終るのかもま…

 掌編_声

頭の中に、金切り声が鳴り響いてくるようになったのは、つい先頃のこと。その声は何の前触れもなく突然襲ってきては、僕の頭の中で木霊するものだから、いつになっても落ち着けない。それは女性のあえぎ声のようでも、断末魔のようでもあり、また、盛りのつ…

掌編_雨粒

一か月ぐらい前だったか、たくさんの雨が降って、たくさんの雨粒が地上に降り立った。僕の家もご多分に漏れず、9人の雨粒たちをベランダに招待したのけれど、その中のひとりに僕は恋をした。彼女は(といっても、雨粒に性別があるのかどうからないが、とにか…

掌編_もうしわけない

永遠というと、何か深遠で偉そうなものを連想してしまう。気の小さな僕はこの言葉と出くわすたびに、足元を見透かされたようなそして冗長な生き方をしていて申し訳ないような気持ちになる。 今ちょうど、読んでいた本でその言葉に出くわしてしまい、いつもの…