<110612 散文>

そとでは雨が降っている。手すりにコツンコツンと、雨粒の当たる音が聞こえる。かなり騒々しいので、けっこう強く降っているのだとわかる。雨が降る、たぶんこの営みは、僕が生まれる前からずっと続いていて、そして僕がいなくなってからも、ずっと続いていくのだろう。それがどうしたという話だけれど、その安定性というか恒常性が日常というやつで、今後雨が降らなくなったり、雨の代わりに赤ワインが降ってくるようなことはあり得ないだろうし、たとえ僕がいま赤ワインの雨を降らせようと死ぬほどがんばったところで、雨粒が赤ワインにかわることはない。雨、あるいは日常というのはある種の暴力的な「法則」をもって、雨といえばH20であるという鉄板の掟をもって、ぼくの生活を形作っているように思う。そういう安定性は平々凡々と生きていく上では確かにありがたいのだけれど、たまには空から降ってくる真っ赤なワインの雨を僕は呑みたい。